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韓国と日本の掛け橋になりたい
田中麻里衣(たなかまりえ)さん

オンタリオ州ノースヨークA.J.セカンダリー・スクールを2002年6月に卒業。 現在、京都女子大学に在学中。

田中麻里衣さんは、父の転勤によって高校2年の冬にトロントに渡った。家族よりも先に現地で生活を開始していた父は、同じような駐在員の家庭にアドバイスを仰いで、麻里衣さんの通う州立の高校を選んだ。日本人留学生は「日本人の少ない」学校を選ぶことが多いが、日本に戻った時に日本の大学にスムーズに進学できるようにと、できるだけ日本人が多い学校を選択した。

ESLのクラスで仲が良かったイラン系の友人(左)と中国系の友人(右)と。

麻里衣さんは、日本の高校2年に相当する11年生のクラスに編入した。日本にいれば2、3ヵ月後には高校3年生に進級する時期だったが、麻里衣さんは早生まれだったため、カナダの学年の区切りでは1学年下にあたり、編入時から丸1年近くを高校2年生として過ごすことになった(カナダの新学期は9月に始まる)。

麻里衣さんはカナダに来た時から、言葉の問題も友達作りについても不思議と不安に思わなかった。通学し出してから間もない頃に、カウンセラーの先生が、一人の日本人女生徒を麻里衣さんに紹介してくれた。後に、困った時に彼女が手を貸してくれることになったのだが、他の生徒の前で日本語を話すと目立つため、お互いに日本語は使わなかった。振り返ってみると、それがカナダの高校生活に慣れるための助けになったと思える。また何人ものクラス・メートが、麻里衣さんが英語をほとんど理解できないことにはおかまいなしに、日本に関する話題を選んで話しかけてきた。それに答えようと、麻里衣さんはジェスチャーで示したり絵を描いて必死になって説明した。こうしたなかで、新しい単語を覚えたらそれを使うことを繰り返すうちに、使えるフレーズも増え、次第に深い話もできるようになり会話が楽しくなっていった。高校生活は毎日が楽しく刺激的で、時の流れがとても早く感じられた。

ナイアガラの滝
日本から来た友達(左)、田中麻里衣さん(中央)、弟さん。

クラスは必須科目の他に、驚くほど多くある選択科目を併せて受講することができた。麻里衣さんは、カウンセラーの先生に相談しながら自分の興味と進路を考えて科目を選んだが、課目を選択すること自体が勉強になった。

課題で最も大変だったのはエッセイ(小論文)だった。どうしても自分の書く文章が幼く見えたため、自分で書きあげた後に家庭教師や友達に見てもらって仕上げるようにした。また、英語のクラスで読んだシェイクスピアの作品は、日本語の「古典」と同じような感覚で、日常使う英語を理解し始めたばかりの麻里衣さんには、まったく分からなかった。泣きたいような気持ちで探し出したシェイクスピアの日本語訳を頼りに学習を進めたが、今もこの時の辛さを覚えている。

カナダの高校では、個人やグループで学習テーマを掘り下げて研究発表を行うプロジェクトやプレゼンテーションがしばしば課せられる。プレゼンテーションで思い出深いのは、演劇の授業だった。最初は演じることに恥ずかしさがあったものの、回を重ねるうちに、自分が他人の目にどう映るかよりも、自分たちの仕立てた劇でどれだけ観客を楽しませ、喚声の上がるようなプレゼンテーションができるかに関心が出てきた。この経験を通して、それまで麻里衣さんが演劇に抱いていた、「一部の才能がある人が行うもの」という観念がなくなったと同時に、仲間と話し合いを重ねてプレゼンテーションを成功させる楽しみも見出すことができた。

韓国人の親友のチマチョゴリを着せてもらって友達と撮影。写真左が田中さん。

トロントはカナダのなかでも最も多様な人種の集まった都市である。クラス・メートの間でも民族的な違いを背景とした意見の食い違いもあったが、様々な視点から物事を見られるようになった。自分が「日本人」であることを深く意識するようになったのも大きな変化だった。また、親しくなった韓国系カナダ人との交流から、日本の隣にあって似ていながら、まったく違う点もある韓国への興味が沸き起こってきた。その結果、「将来は韓国と日本の架け橋になる」ことが目標になった。

麻里衣さんはカナダで得がたい友人を得ることができた。留学生活では勉強と友人関係の両面で、辛いこと、悲しいこと、うれしいことが次々にあり、息つく暇がないほどに感じられたが、今は本当に良い思い出になっている。
周りの人と交流を密にして、学習成果が思い通りに上がらないからといってあきらめることなく努力を積み重ね、必要な時には迷わずカウンセラーから助言を受けることが、留学生活を成功に導いてくれると麻里衣さんは確信している。