カナダの高校では、レジャーを兼ねたようなスポーツも体育の授業に組み込まれている。基本練習に時間をかけるよりも、試合やプレーそのものを通じてテクニックやスポーツの楽しさを学ぶのもカナダの体育授業の特徴だ。
カナダがウインター・スポーツのメッカであることは言うまでもない。世界有数のスキー場であるウィスラーも、バンクーバーから車でわずか2時間の距離にある。体育の授業の一環として貸し切りの大型バスでウィスラーに行った時は、仲間との話も弾んだ。
最高学年ともなると学習内容もかなり高度なものとなる。英語の授業では近未来小説の古典と言われるジョージ・オーウェルの『1984年』を学び、それに関して、「第二次大戦中と現代の社会を比較せよ」という課題が出された。自分が参考にした資料の提示方法もきちんと指示されたうえ、課題の提出後には先生が、参考資料の書き写しではないことを確認した。
匡介君にとり授業の内容が最も高度に思われたのは生物だ。最終学年である12年生では、日本の高校の教科書には載っていないような専門的な事柄が取り上げられていて、知的好奇心が駆り立てられる。 選択教科が豊富なカナダの高校のなかで、匡介君が留学しているエリック・ハンバー校は特に芸術科目が充実しており、音楽のクラスには管楽器を学ぶオーケストラや弦楽器を学ぶストリングス、コーラスなどがある。匡介君はストリングスのクラスを取って、バイオリンを練習中だ。選択授業には写真、コンピューター・グラフィックス、服飾など、生徒の関心の高い授業も用意され、服飾関係のクラスでは、作成した洋服を校内で発表するファッション・ショーを開いている。 父の海外駐在でカナダに来ることになった匡介君は、今年で4年目の春を迎えた。今は英語の生活にも慣れたが、来た当時は新しい環境に戸惑うばかりだった。特に、学校内のESLクラスで中国系の学生が多かったことで疎外感を感じた。日本では活発な匡介君だったが、英語ができずに自分からクラスメートに声をかけられず、最初の頃は、発言する時も緊張でしどろもどろだった。自分の思いがスムーズに伝えられないために悔しい思いをすることも多く、高校へ向かう気持ちが萎えそうになることもあった。しかしここで挫折してしまえば、生涯自分に負い目を感じることになるだろうと思い、「強くなってみせる」という意地で匡介君は高校生活をがんばり通した。 授業の選択を始め、自分から行動しなくては何も進まない高校生活のなかで、自主性と新しいことにチャレンジする度胸を身につけた匡介君。自分の経験を振り返って、これから留学したい人に伝えたいことは、日本にいる間も英語で聞いたり話したりする環境になるべく多く身を置くこと、細かいことは気にせずどんどん自分から積極的に行動すること、そして楽しいことをどんどん見つけ出していくことだと語る。 高校卒業を目前にした匡介君の将来の夢は、日本で英語の教師になって自分の体験を分かち合いながら子供たちの力を伸ばせるよう指導していくこと。見知らぬ世界に挑戦して成し遂げた経験は、これからの人生の大きな力となっていくことだろう。 |