スタディー−留学・英会話記事
  大学編入プログラム 私の留学記 海を渡った高校生 クロストーク
  英会話留学無料代行手続き・問合せ

英語教師になって体験を分かち合いたい
井坂匡介

東京都出身17歳。
バンクーバーEric Hamber Secondary School 12年生在籍中


カナダの高校では、レジャーを兼ねたようなスポーツも体育の授業に組み込まれている。基本練習に時間をかけるよりも、試合やプレーそのものを通じてテクニックやスポーツの楽しさを学ぶのもカナダの体育授業の特徴だ。
井坂匡介(いさかきょうすけ)君は、体育の授業でゴルフ、ウォール・クライミング、ビリヤード、そしてカナダで生まれたスポーツであるカーリングに挑戦した。
ゴルフのクラスは練習場で行うだけでなくコースにも出る。ウォール・クライミング・クラスは、校外の専用屋内ジムで行う。日本での中学時代、バドミントン部で体を動かしていた匡介君は、体育の時間はここぞとばかりに張り切った。クラスメートから「お前やるじゃないか」と評価されていくうちに、仲間ができてきた。

カナダがウインター・スポーツのメッカであることは言うまでもない。世界有数のスキー場であるウィスラーも、バンクーバーから車でわずか2時間の距離にある。体育の授業の一環として貸し切りの大型バスでウィスラーに行った時は、仲間との話も弾んだ。
スキー場に到着すると、どこまでも広がる雪原に開放感で一杯になった。迷子になりそうなゲレンデでスノー・ボードを思いきり満喫して以来、匡介君にとってスノー・ボードはカナダでの最大の楽しみとなった。
スポーツ以外にも、共同で取り組む自主課題が友人関係を深めてくれた。フランス語の授業で、テレビのコマーシャルを作成する課題が出された時、匡介君は数名のグループで料理本のコマーシャルを作成する企画を立てた。調理の場面を実演して本の紹介をするシナリオを作成。調理の材料をそろえて仲間の自宅で撮影に臨んだ。フランス語のセリフを覚えられなかったので、カンニング・ペーパーの置き方を工夫し、試行錯誤しながら撮影するなど大変だったが、撮影の合間の仲間との交流が楽しい思い出となった。

最高学年ともなると学習内容もかなり高度なものとなる。英語の授業では近未来小説の古典と言われるジョージ・オーウェルの『1984年』を学び、それに関して、「第二次大戦中と現代の社会を比較せよ」という課題が出された。自分が参考にした資料の提示方法もきちんと指示されたうえ、課題の提出後には先生が、参考資料の書き写しではないことを確認した。
このレポートで匡介君は、政府による市民の思考統制方法に焦点を定め、現代社会との比較を試みた。図書館やインターネットで資料を集め、ベトナム戦争や近年のイラク侵攻でのアメリカ政府に見られる人間心理のコントロール方法を取り上げて考察をまとめた。当然ながら参考資料はすべて英語である。仕上げるまでは大変だが、プロジェクト課題は日ごろのテストよりも評価が高いため、周りの生徒も真剣に取り組んでいた。

匡介君にとり授業の内容が最も高度に思われたのは生物だ。最終学年である12年生では、日本の高校の教科書には載っていないような専門的な事柄が取り上げられていて、知的好奇心が駆り立てられる。

選択教科が豊富なカナダの高校のなかで、匡介君が留学しているエリック・ハンバー校は特に芸術科目が充実しており、音楽のクラスには管楽器を学ぶオーケストラや弦楽器を学ぶストリングス、コーラスなどがある。匡介君はストリングスのクラスを取って、バイオリンを練習中だ。選択授業には写真、コンピューター・グラフィックス、服飾など、生徒の関心の高い授業も用意され、服飾関係のクラスでは、作成した洋服を校内で発表するファッション・ショーを開いている。

父の海外駐在でカナダに来ることになった匡介君は、今年で4年目の春を迎えた。今は英語の生活にも慣れたが、来た当時は新しい環境に戸惑うばかりだった。特に、学校内のESLクラスで中国系の学生が多かったことで疎外感を感じた。日本では活発な匡介君だったが、英語ができずに自分からクラスメートに声をかけられず、最初の頃は、発言する時も緊張でしどろもどろだった。自分の思いがスムーズに伝えられないために悔しい思いをすることも多く、高校へ向かう気持ちが萎えそうになることもあった。しかしここで挫折してしまえば、生涯自分に負い目を感じることになるだろうと思い、「強くなってみせる」という意地で匡介君は高校生活をがんばり通した。

授業の選択を始め、自分から行動しなくては何も進まない高校生活のなかで、自主性と新しいことにチャレンジする度胸を身につけた匡介君。自分の経験を振り返って、これから留学したい人に伝えたいことは、日本にいる間も英語で聞いたり話したりする環境になるべく多く身を置くこと、細かいことは気にせずどんどん自分から積極的に行動すること、そして楽しいことをどんどん見つけ出していくことだと語る。

高校卒業を目前にした匡介君の将来の夢は、日本で英語の教師になって自分の体験を分かち合いながら子供たちの力を伸ばせるよう指導していくこと。見知らぬ世界に挑戦して成し遂げた経験は、これからの人生の大きな力となっていくことだろう。