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笠井梓(かさいあずさ)さん<前編>
三重県出身 
West Vancouver Secondary School 留学中 
18歳

留学への道のり

将来世界に飛び出そうという気持ちを小さな頃から胸に抱いていた笠井梓さんは、 母に頼みこみ、高校1年の夏休みにカナダを訪れ、1ヵ月のホームステイを経験した。滞在先のウエスト・バンクーバーでは、近所に暮らす日系カナダ人の高校生と知り合いになった。この高校生は、梓さんの留学への思いを知ってから、地域のあちこちの中高等学校に梓さんを見学に連れて行ってくれた。梓さんはそのままカナダの高校に編入してしまいたい気持ちだったが、親の反対を受けて予定通り1ヵ月で帰国した。

偶然の出会い

日本に帰った梓さんは、高校の教室の壁に貼られていた<カナダ留学フェア>のポスターを見つけた。そのフェアへ出向いたところ、偶然ウエスト・バンクーバー教育委員会が参加していた。その留学担当者といろいろ話し、また、現在留学中の日本人高校生の紹介を受け、以後梓さんはその留学生と電子メールでやり取りをして、留学にあたっての疑問を解消していった。そして偶然にも、その留学生は、先のホームステイ中に見学して回った高校で顔を合わせていた生徒であることがわかった。
偶然の出会いが重なり、留学というビジョンが現実性をもって目の前に広がってきたが、迷いも大きかった。そんな折、一番信頼を寄せている先輩が、「自分の夢なら追いかけてみたら」と背中を押してくれた。そこで留学への決心が固まった。

「自分で決めたことだからすべて自分で進めるように」という母の言葉を受けて、梓さんは、入学審査に必要なエッセイやその他の必要書類の用意や、留学エージェントとの打ち合わせを自分で行った。留学先の学校は、1年前に見学したウエスト・バンクーバー・セカンダリー・スクール(中学と高校が一緒になった学校)と心に決めていた。その学校には、大きなキャンパスが2つ、広々としたグラウンドと体育館が3つ、さらにシアターと、モダンで充実した設備があり、梓さんにはまさに理想の学校だった。だれが何と言おうと自分が留学する学校はここだけと決めて譲らなかった。

いよいよ留学開始

高校2年の夏休みに憧れの留学を開始するべく、再びカナダに渡った。学校の新学期が始まる前の3週間は、学区内の留学生を一堂に集めたオリエンテーションが行われた。オリエンテーションは、レベル分けされたESLの授業と、ウィスラーなど郊外へ出向く盛りだくさんのアクティビティで構成されていた。留学生は香港やドイツなど世界各国から集まっており、会話は当然のことながら英語だ。現地に行けばなんとかなると考え海外に飛び出した梓さんは、その頃、ほとんど片言しか英語を話せない状態で、楽しいはずのオリエンテーションも、周りの話がわからず、自分を表現することもできない辛さに、梓さんは毎日泣き暮らした。

それから半年間は「もう学校に行きたくない」気分が続いた。とても辛い日々だったが、食事時、ご飯を口に運びながら「ご飯が食べられるだけいいんや」と気付いたり、実家の母に「辛いことは楽しいことの準備やから、辛いことたくさん経験しいや」と言葉をかけられたことで、梓さんは自分を慰め、元気づけていた。

幸いホストファミリーには16歳、14歳、4歳の楽しい三姉妹がいて、梓さんはみんなと仲良しになって、一番年少の子供はよく一緒に遊ぼうと声をかけてくれていた。一度、梓さんが手巻き寿司をホストファミリーに紹介したところ、皆、自分で寿司を巻けることに大喜びで、食卓がとても賑わい、家族中がみんなハッピーな気分になった。

もとからお菓子作りが好きで、母の調理の様子も良く見ていた梓さんは、お昼に自分で作った弁当を持っていくようにしている。あるときホストファーザーから、高齢者の集まる施設で食事作りの準備を行うボランティアの募集があることを聞き、それに参加することにした。ボランティアで野菜切りをしているとストレスが発散され、梓さんの沈んでいた気持ちがだんだんと晴れていった。

勉強はとにかく大変だった。日本で触れていない分野の勉強が多く、特に物理の原子力の学習の時には、自宅の机に日本の参考書と英語の辞書とを広げながら、教科書を1ページずつ日本語に置き換えながら、完全に理解できるまで勉強した。そんな時、2年前に他界した父が言っていた「一生に一回、勉強はしとくもんや」という言葉を思い出し、今がその時だと思って梓さんはがんばった。

表情に明るさが出てきた

そうした努力を重ねながら英語環境で学び続けているうちに、英語で軽口も叩けるようになってきた。留学開始から1年経ったこの夏、梓さんは留学生のオリエンテーションに今度はカウンセラー役の学生として参加した。不安な面持ちの新米留学生たちに梓さんは、「大丈夫、私も最初、ESLのレベル1だったから」と明るく声をかけた。自分の当初の辛かった体験から、留学のスタートを切る仲間を精一杯応援してあげたいという気持ちに梓さんは突き動かされていた。

このオリエンテーションでカウンセラー役を経験したことを機に、留学生活が一気に楽しいものに思えてきた。周りの友達にも明るくなったねと言われるようになり、勉強への面白みも増してきたのだった。(続く)

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