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田畑祐一
(たばたゆういち)

立命館大学経営学部2年生
(UBCプログラム14期生)

立命館・UBCジョイント・プログラムの学生としてカナダに来て、2ヵ月という月日が過ぎた。この2ヵ月は本当にあっという間だった気がする。8月の初めからの1ヵ月間はバンクーバー島のコモックスでホームステイを体験し、9月からはバンクーバーでUBCの授業を受けている。

コモックスはとても自然が豊かで、町を歩いているだけで心のなかの悩みが消えていく気がした。空を見上げると、日本では見たこともない大きな「青」が広がり、日本と同じ空なのに、なぜか自分と空との距離がとても近く感じた。そして、この自然に囲まれながら時間を過ごしている人たちは、とても親切でやさしかった。こんな環境のなかで英語を勉強できたことをとても幸せに思う。きっとコモックスで出会えた人々は自分にとってこれからも宝物になるのは間違いない。特にホストファミリーとの関係はこの先ずっと続けていきたいと思っている。コモックスを離れる日、ホストファミリーが「あなたは私たち家族の一員」と言ってくれたことがとても嬉しくて、コモックスに来て本当に良かったと、何度もUBCに向かうバスの中で思った。今年の冬にコモックスに帰ることも決めているし、このプログラムが終わり日本に帰っても、休みを利用して会いに行こうと思っている。

しかし、こんな最高の環境のなかで過ごしていても、"焦り"が自分のなかにあった。おそらく、コモックスでの研修に参加した多くの生徒も感じていたと思うが、それは英語力向上への焦りである。1ヵ月で結果を求めるのは良くないと、誰もが分かっていることだけれど、やはりつい考えてしまう。自分の英語は上手くなっているのか?まったく自分では変化を感じ取れず、焦りが募る一方だった。

しかし、UBCの授業が始まってから、その焦りは少しずつ自分の頭から姿を消しつつある。UBCに来てやりたいことがはっきりしてきたからである。もちろん焦りがすべて無くなったわけではないが、英語に捕らわれすぎないことにした。"8ヵ月"という時間は、自分の理想をすべてやりきるにはあまりにも短すぎる時間で、「それなら一つのことを徹底してやった方が良いのでは」、と気持ちを切り替えたからである。自分の場合はそれが"ボランティア"である。この8ヵ月をできる限りボランティアの時間に使おうと考えている。この選択が正しいかどうか分からないが、とりあえずできるだけの努力をしてみたい。

今、こうしてボランティアを頑張ろうとする自分がいるのも、日本での大学生活を無意味に過ごさなかったからだと思う。私の高校時代は、とてもひどいものだった。軟式テニスの強い高校への入学の希望がかなわず、それを理由に多くのことを投げ出してしまっていた。テニスプレーヤーという自分の夢を見失い、何をするのも嫌になったからである。しかし幸運にも私の学校は異文化理解に積極的な学校で、修学旅行でカナダに来たことが、自分の新しい目標を見つけるカギになったのだ。

大学に入ってからは色々なことをやってみた。教職の授業や、簿記2級の資格にもチャレンジしてみた。留学が一番の目標であったけれど、留学する前に自分のやりたいことを見つけたかったからだ。そして、養護学校体験の説明会で、私はその目標を見つけることができた。それがボランティアだった。養護学校の先生方の姿勢に私はとても感動し、カナダでも人の助けを行っているボランティアに参加したかった。ここでのボランティアでの経験が、自分の将来への地図をより明確に示してくれ、今の自分に何が必要なのか示してくれる気がしたからだ。

日本を発つ日、父が手紙をくれた。その手紙の中の一文にこう書かれていた。
「努力が必ずしも結果に結びつかなくとも、自分に納得するものがあってもいいのでは」
父はもう60近くになるが、父の人生の中で、足を止めて休もうとしたことはないのではないかと思う。私は父が努力をしてきた人だと言い切れる。おそらく何度も壁にぶつかってきたのだろう。しかし何度もそれらの壁を越えてきたのだろう。今父はパソコンを習い始めた。この手紙もパソコンで打たれたものだった。機械から生まれた文字が、なぜだかとても重く感じたのは、父が超えて来た壁のせいだろう。そして私はこの父の言葉を信じたいと思う。なぜなら、ずっと父の背中を見てきたからだ。だから、この8ヵ月間を自分に問い質(ただ)した時に、納得のできる努力をしようと思う。

今、私はボランティア先からのメールを待っている。英語がままならない人間が、ここカナダでボランティアをするのは、やはりとても難しい。ボランティア希望者のなかには、英語が理由で断られてしまった人もいる。しかし、私は諦めたくない。なぜなら、自分の夢に向かって歩き出す第一歩だからである。私の夢は非営利団体のスタッフとして、世界中の人々の助けとなれる人間になることである。色々な事情で苦しんでいる人々を助けることは、そう簡単なものではない。養護学校体験でも、そのことを特に教わった。だから自分には経験が必要なのである。私にとってUBCでの生活は、大きな経験としてこの先意味を成すことは間違いない。多様な文化や背景をもった人々と過ごせる機会など、日本ではとても得ることができないからである。それゆえに多くの困難が私を待っているだろう。歩みを止めてしまいそうになる時が来るかもしれない。しかしその度に父の姿を思い出し、一歩前へ踏み出そうと思う。自分を最後まで応援してくれた友達のために、家族のために、そして自分自身のために。

立命館・UBCジョイント・プログラム

立命館大学とUBCが共同で開発したカリキュラムに基づき、学力と語学力の向上とともに、カナダでの生活体験を通して国際人として成長することを目指したプログラム。立命館大学と立命館アジア太平洋大学の学生100名が、毎年UBCに1年間留学し、言語教育科目や環太平洋研究、異文化間コミュニケーション等を受講している。

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