日本の高校2年生の夏にカナダの高校に留学してきた梓さん。最初の半年は英語が理解できずに四苦八苦したが、しだいに耳もなじんで高校の授業も苦痛でなくなってきた。 小論文の試験が課される社会科 社会科のテストでは、地理、政府、歴史の分野であらかじめ決められた10のテーマのなかから、試験当日に1つが選ばれて、小論文を書くことが指示された。梓さんは1ヵ月前からすべてのテーマについて小論文を用意した。当日発表されたテーマは、「発展途上国を活性化させるにはどのような方法をとるのが良いか」で、梓さんは、「先入観だけで対象国の状況を判断せずに、現地でその国の実態を良く見たうえで、産業の基盤となる輸送交通システムの整備から手がけていくのが良い」という趣旨の小論文を書いた。
発言の機会の多い授業 カナダの高校の授業では、自分の意見を発言する機会が多くある。先日、英語の時間に「女性の独立」をテーマに意見を交換することになった。イラン出身の生徒は、「女性は家にいて家事をするのが当然である」という意見だった。他の生徒たちは、「家事や育児は夫と分担するものだ」という意見だった。梓さんも後者の側で、思う存分意見を述べた。理性的な意見であれば、どんな内容であろうと、周りから非難されたり中傷されることがないため、安心して自分の考えを話すことができる。こうした環境がカナダの学生生活で梓さんの特に気に入っている点だ。
数学は梓さんの好きな授業の一つ。数学の先生はチャーミングで明るい女性で、私的な話などを交えて気さくに講義をしてくれる。教え方はとても分かりやすく、難解な内容も先生の説明があれば、すらすらと理解できるのだ。クラスメートの成績もたいへん良く、噂で聞いた「先生の授業を受けていれば、州一斉テスト(高校卒業に必須なテスト)の数学は合格間違いなし」という言葉は本当だと実感した。 大好きな選択授業は設計 設計(ドラフト)のクラスは梓さんの飛び切りお気に入りの授業だ。11年生の時に、「日用品の過去、現在、未来の姿」をまとめる課題が出された。題材にティー・ポットを選んだ梓さんは、コーヒー・メーカーの変遷からティー・ポットの未来を予想して、想像で構造図を描き、レポートにまとめた。自分で選んだ題材だけに、調べれば調べるほど興味が沸き、未来の姿を想像することも楽しかった。 12年生になると、設計のクラスは複数の教科に分けられる。梓さんは、建築分野を選択した。教室には建築設計技師士だった父が自宅のオフィスに置いていたものと同じ設計用の机が並んでいた。授業は変化に富んでいて、ある課題では、2人がペアになり、1人が建築物の写真を見ながらそれを口頭で説明し、パートナーはその説明を聞きながら絵を描くよう指示された。梓さんは課題に取り組みながら、建築物を適確に表現し、相互に理解するためには、さまざまな術語を正確に使う必要があることを理解した。
途上国への学校建設の夢―学ぶ機会への感謝の気持ちから 梓さんは将来建築の分野に進もうと考えている。それは、「学校施設のない途上国に、自分で設計した学校を建てたい」という夢をかなえるためだ。日本やカナダでは、学校はどんな子供も無償で当たり前に通うことのできる場所だ。そして梓さんは今、留学という機会まで得て学ばせてもらっている。そのありがたみの恩返しをするために、梓さんは自分のお金を使ってでも、学習の機会に恵まれない子供たちのために学校を建てたいと思っている。
カナダの高校留学生活の1年間で、梓さんは物事を冷静かつ客観的に見れるようになったと感じている。周りの高校生と話していても、ただ内容を聞くだけでなく、その人の心の状態まで洞察している自分がいるのだ。
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