元気で明るい由衣さんは、先月号に登場した柘植絢子さんの日本からの友人だ。留学後もお互いのステイ先を訪ねるなど、支えあってきた。日本で通っていたのは仙台育英高校の外国語コース。その学校の交換留学プログラムを利用して、昨年9月からウェスト・バンクーバーにあるセンティネル高校に留学中である。ウェスト・バンクーバーは高級住宅地として知られ、また、ウェスト・バンクーバー教育委員会は交換留学に力を入れていることでも有名だ。由衣さんは、美術・料理・体育・数学を一般教科として受講し、選択科目としてESLを4教科取っている。ESLクラスの5〜6割はイラン系の生徒という。学校がある地域によって、民族構成が異なるのも移民大国バンクーバーの特徴といえる。 友達作りのために制服で登校 留学は育英入学前から希望していたが、留学すると国立大学を目指せなくなるという恩師の意見を聞き、迷っていた。しかし、友達に付き添って留学センターに行ったのがきっかけで、「やっぱり留学したい」と、カナダ行きを決めた。 父は教育長、母は英語教師 父は小学校の校長、母も小学校の英語教師という、教育熱心な家庭で育った由衣さん。中学生の時に英語の弁論大会に出場、100人近い中から11位に選ばれたこともある。テーマは家族で訪れたイギリスについて。小学校1年生の時から毎年1回、英語圏を中心に家族で海外旅行に行っていた。また、母の職業柄自宅に外国人を招くことも多く、由衣さんは自然と英語や外国に親しみをもち、留学を考えるようになっていた。留学を熱心に勧めていたのは母で、父は自分自身の米国留学で、食生活の違いから高血圧になった経験があるため、かなり心配した。だが、それも杞憂に終わった。「ホストファミリーが菜食中心なので、食事はとてもヘルシー」。魚やチキンは若干食べるが、基本的に肉類は感謝祭などの時だけ。お弁当もホストファミリーが作ってくれるが、「最近太ったので、人参だけだったり(笑)」。日本食が恋しくなったことは、まだない。 意外なきっかけで英語の壁を打破 そんな由衣さんも、渡加後3ヵ月くらいの頃、英語力が伸び悩んだ時期がある。母が期待しているというプレッシャーもあり、深刻な悩みだった。そして新聞で見つけた人生相談に電話した。日本人通訳を介しての英語での相談だったが、営業的な回答で、結局解決にはつながらなかった。しかし、意外にもこれが糸口となり、壁を乗り越えることになった。通訳が話す英語を聞き、簡単な英語でも通じることを知ったのだ。
熊に遭遇!自然がいっぱいの環境
小学生が2人いるホストファミリーとの関係にも満足している。ホストの家は、ブリティッシュ・プロパティーと呼ばれる緑に囲まれた静かな美しい高級住宅地にあり、由衣さんは離れを1人で使わせてもらっている。学校からは歩いて50分ほど。
新しい自分との出会い 留学を通して日本の教育との相違にも気付いた。 「中学までは自分に何が向いているかわからないので、みんな同じ基礎授業でも良いですが、高校では自分で科目を選択して組み立てた方が良いと思います。何か一つ、特技を伸ばせば仕事もあるはず」。
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