過去1年半にわたり掲載した「海を渡った高校生」では、カナダの高校に留学中、もしくは過去に留学を経験した日本人留学生16名をレポートした。今回は、この16名の取材を振り返り、高校留学の実態をまとめてみたい。 高校留学を思い立った動機には、「英語を身につけたい」、「自分のやりたいことを見つけやすい環境を望んで」、「独り立ちしたい」、「海外生活経験を将来の糧にしたい」などが挙げられていた。 取材をした学生は一様に高校留学を成功させ、英語を向上させることにも地道に取り組んでいた。留学前から会話だけでなく読解力養成にも力を入れてきた生徒もいたが、留学中は、先生と積極的に話すことを努めていた生徒、自分から積極的にカナダ学生の輪の中に入って、会話に出てくる単語を逐一調べては覚えることを繰り返してきた生徒、時間を見つけては英語の本を読み込んでいた生徒、新聞、雑誌の要約内容をホストファミリーに聞いてもらって勉強した生徒などがいた。 カナダの高校で出される課題のなかで、日本人留学生が最も苦労しているのはエッセイ(小論文)課題だった。エッセイを完成させて高い評価を得た生徒は、先生や友人に自分から助けを求めて、何度も質問しながら取り組んでいた。
カナダの高校は、選択科目を幅広く用意しているが、それぞれの学校が特に力を入れている分野がある。こうした選択科目のなかで、日本人留学生の注目を集めたもののなかには、弦楽器やオーケストラのクラス、服飾などの芸術系のクラス、映像やテレビのクラス、不動産投資なども扱う会計学クラスなどが挙げられていた。 選択教科の一つである体育のクラスは、留学して間もない学生にとってクラスメートとのコミュニケーションを促す手助けにもなっている。特に、丸一日かけて郊外へ出かけて楽しむ登山やスキーでは、仲間との交流が深まって印象深い思い出が作られている。カナダの高校の体育のクラスは、日本の学校で行われているような一般的なスポーツの枠を超えることが多く、ゴルフ、サイクリング、カーリング、ウォール・クライミングなどを教えている高校もある。 体育のクラスのように友達作りに有効だったことに、各種授業でグループや2人1組になって課題に取り組んだことを挙げる生徒が多かった。男子生徒からは、休み時間や放課後に自由に楽しむバスケットボールが役に立ったとする声がよく聞かれた。そして特に課外クラブ活動に参加している生徒は、同じ目的に向かって力を合わせるなかでカナダ人学生とより深い交流をもつことができている。 カナダの高校の教科には、学年の枠を超えて選択できるものも多い。もとよりカナダでは先輩、後輩の上下関係があまり存在しないため、交友関係も学年の枠にとらわれずに広がっている。
ホームステイ先のホストファミリーは、留学を成功さえるうえで大きな役割を果たしている。文化も生活習慣も違うファミリーと一緒に暮らすなかで、留学生は様々な体験をする。ホストファミリーと互いに分かり合え、よい関係が作れることは、留学の成否を決める大きな要素だ。 「息つく暇もないほど」、「目まぐるしく時間が過ぎる」と留学生たちが形容するように、新鮮な発見と驚きのなかで留学生活は過ぎていく。 懸命に生活に取り組みながらも、自分ではどうにもならない壁に直面することもあるし、自分の行動指針を見失いそうになることもある。そうした時に、留学生
の助けとなっているのは、友達、学校のカウンセラー、ホストファミリー、留学サポート・スタッフ、実家の家族といった周囲の人たちだ。多少の波にも負けずに留学生活を送る推進力となるものは、しっかりとした目的意識であり、やり抜こうとする気力であると語る留学生は多い。
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